籠のなかの花嫁
美羽は俯きながら、聞こえないほど小さく


笑った。





そうね。

普通ならそう思うわ。

でも、あたしは違う。

あの二人のために自分の人生を犠牲になんて絶対にしない。

ま、あの二人を両親だと思っているなら、両親のためだと思われても仕方ないか。



この人も余程息子が可愛いのね。

自分が経験した身勝手な結婚を、目の前にいるあたしにさせようとしているんだもの。

理由が違えど、あたしが苦しんでいると知りながら・・・

息子がどうしてもと言ったら、人の子のことなんてどうでもいいのね。

それとも、自分が上手くいったから私達も上手くいくとでも思っているのかしら?

ま、せいぜいあたしを嫁にもらうことを後で後悔するといいわ。




「確かに、勝手にお見合いや同棲をさせられたことには腹が立ちましたが、私は誰も恨んではいません。ましてや私に良くして下さる晴太さんになんて」



そう微笑んで千恵子に言えば、千恵子はホッとした顔になり、美羽に礼を言い夫、竜郎と共に帰っていった。



せいぜい今のうちに、息子の幸せな顔を見ておくことね。


お義母様。


すぐに、あたしへの怒りの表情に染まるでしょうから。



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