籠のなかの花嫁
もちろん、出ていくとは嘘。



ここまで言わなければ彼は口を開かないと思ったのだ。



ここで出ていけば、計画が台無し。


今まで何のためにここまで頑張ってきたのかわからない。




「待ってくれ!!」


「きゃっ!?」




そして美羽の予想どおり、彼は美羽を引き止めた。



しかし、引き止め片は想定の範囲外だった。




美羽は、晴太の腕の中に包まれていた。





ハッとして、美羽が離れようと彼の胸を押しても、びくともしなかった。



するとふいに晴太が呟いた。



「ごめん・・・・・・・」


「え?」


「勝手に部屋に入って悪かった。本当にごめん。だから・・・出ていくなんて」



“出ていくなんて、言わないでくれ”



消え入りそうな声で、そう言った。



「じゃぁどうして?どうしてあたしの部屋に・・・」


「それは・・・・・」



少しの沈黙の後、晴太は重い口を開けた。




「あの見合いの時から、美羽がどんどん離れていくから、何か気を引けるものはないかと思って、机の中を探ったんだ」




え・・・・・・・・・・?




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