籠のなかの花嫁
「・・・じゃぁ、俺が行きたい時は誘う。それもダメか?」


「晴太さん・・・」



“俺とは行きたくないのかよ”とつい勢いで言ってしまいそうだったが、晴太もそこまで幼くはない。



あくまでも、美羽の気持ちを察して優先することが第一だと思っているのだ。


ただ、どうしても言いたい一言だけは付け足した。



「俺がお前に惚れてること、忘れてんなよ」



あ・・・・・・・・。



美羽の頭にポンと手を乗せ、駐車場に向かう晴太を少し頬を赤らめながら見つめた。




惚れていると言われ、その上キスもされた相手と、恋人という関係じゃないのに暮らしていること自体おかしいけど、イヤじゃない。



むしろ、この状態に安心しているかも。



やっと、自分を必要としてくれている人に出会えた。



もうあたしは一人じゃないんだ。



そう思えた。




でも、これが彼への愛情なのかどうかは、まだ分からない。






「ほら、帰るぞ!」


「あ、はい!」



車の傍から言う晴太に美羽は急いで駆け寄っていった。






胸中で、ひっそりと恋の芽が育っていることも知らないで────










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