leicht bitter~bitter sweet続編 side 健一~
 和紗が奏でる心地よいメロディーに聴き惚れてて、本来の目的をすっかり忘れとった。

 遠目にもゆきなちゃんの肩が震えてんのがわかる。和紗が彼女の元へと歩いていく。

 こっからやと遠過ぎて2人の会話が聞こえへんな。……ってオレ、何してんねん?

 ゆきなちゃんが来たゆー事は、やっぱり2人は恋人同士やとゆー事……。それさえ判ればどんな会話してようが関係ないやんけ。

「……アホらし。帰ろ」

 隠れとった自販機に背を向けて歩き出す。

「きゃ~! ドラマみたいッ!!」

 人間ってゆーのは、見たくない物ほど見てまう生き物なんやろう。

 女共の声に反応し、振り向くとゆきなちゃんのスカートが揺れてるんが見えた。

 そして和紗の背中にはしなやかそうな手。

「和……紗、和紗ッ」

 聞きたくて……聞きたくてたまらんかったゆきなちゃんの声。初めて聞けたんが他の男の名前を呼んでるそれやなんて……皮肉過ぎて笑ける。





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