leicht bitter~bitter sweet続編 side 健一~
 ひとつひとつ丁寧に話す彼女。その間も彼女の目はまっすぐオレを見つめ、逸らす事はしない。

 そのままゆきなちゃんは話を続ける。

「父親の本社栄転が決まって、中三の二学期に転校させられたんやけどめっちゃ嫌でね。友達と離れるんもやけど、何より関西を離れるんが嫌で仕方なかった。

 一人も知り合いがおれへんし言葉も違うしで、全然馴染めんくて……でも両親は自分達の事ばっかで私の事見ようともしてへんかったのね。

 もちろん、新しい友達なんて出来ひんかったから余計にどんどん内に内に籠る様なってね……気ぃついたら笑い方を忘れてたん」

「え……笑い方忘れる? ってどういう意味?」

「“笑う”って事が全然出来ひんかったの、ニコッて微笑む事もせーへんくてね……今の私から想像出来ひんやろ? そやからあの頃は生きてて楽しい、って思う事なんて何ひとつなかった……和紗が転校して来るまでは」



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