leicht bitter~bitter sweet続編 side 健一~
 元々は唯の信用を得る為に始めた事やった。

 ――音楽を志す人達の夢を叶える橋渡しがこの店で出来たら――。

 ……なんて企画を持ち掛けたものの、そう簡単に身を立てられる程世の中甘ないのは分かり切ってる。

 デモテープを持ち込みに来る連中の、せいぜい一組でも人気が出ればめっけもんって感じやった。

 それやのにまさに今、夢の入口の扉の前に立ってる人間がいてる。

 それは他でもないオレの親友。

 アイツの作る曲は聴いてて心地が良いし、顔も悪くない。和紗を売り出せたら面白そうやと思ってたのも確かや。

 けど、まさかそれが現実になるやなんて思ってなかった。








 和紗が来たのは、店長から携帯を返されてから20分くらい過ぎた頃。

 電話の内容だけではいまひとつ信用出来ないといった面持ちで現れた和紗は、「健ちゃん一緒におってもらいたいんすけど、あきませんか?」と店長に願い出てくれたお陰でオレもその場に立ち会う事が出来た。




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