leicht bitter~bitter sweet続編 side 健一~
「うーわ、もうこんな時間?」

 和紗の声に反応して時計を見ると、あと5分で上がりの時間。

 今日オレ、ほとんど仕事らしい仕事してない。

 果たしてこのまま帰ってエエんかどうか迷ったが、店長の「時間になったら上がっていいよ」の言葉に素直に甘える事にした。

「健ちゃん、途中まで一緒に帰ろう」

「ああ。ほんなら店内で待っとって」

 上がり時間丁度にタイムカードを打刻し、帰る用意を整える。

「和紗、おまた……」

 和紗を店内に迎えに行くと、唯と和紗がなにやら楽しそうに話し込んでる。
 なんか雰囲気的に話しかけづらい……あいつ、オレの存在を忘れてないやろな。

「和紗、悪い。待ったか?」

「あら。小野くん。お疲れ様」

「健ちゃんお疲れ~。大丈夫。そんな待ってへんよ」

 じゃあ帰ろか、と和紗に話しかけたオレのセリフは「じゃあ、和紗くん。お願いね」と言った唯の言葉に見事にかき消された。





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