【短】蒼の旋律─First Love.─
…Ⅰ…
放課後。
あたしはいつも 友人達が口々に吐く“マック”や“プリクラ”という誘惑に見向きもせず、真っ直ぐ家へと向かう。
…けど
あたしの目的地は自分の家ではなく、その隣にある 白い外壁がきれいな弥琴の家。
ピンポーン
インターホンを押したはいいものの、なかなか返事がない。
(…あ、咲いたんだ)
ふと 庭の片隅でひっそりと花開いている、小さい白バラに目が留まる。
…毎日毎日、大事に育ててたもんね。
自ら主張してる訳じゃないのに、その存在は自然と他人の目をひく。
まるで弥琴みたい。
花も 育てた人に似るものなのかな。
ぼんやりそんなことを考えてると、二階の部屋の窓の隙間から ポロリ ポロリ と、ピアノの旋律がこぼれ落ちて来た。
─────弥琴からの『入っていいよ』の合図。
あたしはそれを心地良く耳に受け入れながら、扉に手をかけた。