【短】蒼の旋律─First Love.─
「いらっしゃい、奏ちゃん」
一番にあたしの目に飛び込んで来たのは、いつもと同じ笑顔であたしを迎える弥琴。
由茉の姿はどこにも見当たらなかった。
「…由茉は?」
「今帰って貰ったよ。行き違いになっちゃったのかな」
「どうして…」
「奏ちゃんが、来るだろうなあと思って」
見えてたの……?
弥琴は静かに歩み寄ってあたしの前に立ち、あたしの瞳を覗き込む。
「……だって奏ちゃん、泣いてたから」
「………泣いてないよ」
「そう」
「泣いてないってば」
「うん」
─────何でそんな目で見るの……
優しさが嬉しくて、いたい。