【短】蒼の旋律─First Love.─
突然、ピアノの音がぴたりと止まる。
弥琴は窓の外をじっと見ていた。
(……何?)
窓の外には、あたしの家。
そしてここの部屋から丁度正面に見えるのは、あたしの姉、由茉(ゆま)の部屋だ。
(──────由茉……)
由茉は机に向かって何やら書き物をしているようだった。
由茉は弥琴と同じ音大に通っていて、フルートの勉強をしている。
紛れもなくあたしと同じ親から生まれてるはずなのに、あたしとは何もかも正反対。
おとなしくて物腰が柔らかで。“美人”という感じではないけれど、時折ハーフに間違われるくらい整った顔立ちをしている。
丁寧にケアされたロングヘアをなびかせてフルートを奏でる姿が、とってもきれいなんだ。
音大では一部で『マドンナ』なんて呼ばれているらしい。
どこをとっても“普通”なあたしとは大違い。
──あたしは密かに、弥琴は由茉が好きなんじゃないか…って、思ってる。
いつだって、由茉を見つめる弥琴の瞳からは小さな“想い”が感じられる。
………多分。