【短】蒼の旋律─First Love.─
「へっ?」
弥琴はボトルを静かにピアノの上へ戻すと、急にあたしの手を握った。
え、と……………はいっ?!
「ちょ、みこ──…っ」
「ほらね」
そのままあたしの指は操られ、鍵盤をすべり、“ド”の音をはじく。
音は一人で部屋中を飛び回り、ボトルの蒼を揺らした。
「…ね?きれいでしょ」
…すっかり忘れているのか、弥琴はあたしの手を握ったまま、ふわりと微笑んで見せた。
(───────弥琴)
その笑顔はルール違反だよ…
一瞬、どきっとした。
けど、一番どきっとしてるのは そんな自分自身に対して。
(今日のあたし、変だ……)
あたしの手をすっぽりと包み込む、大きな手を見て思った。
今あたしの隣にいる彼は、いつのまにかあたしの中で “お隣のみことちゃん”から
一人の“弥琴”という人間になっていたんだ、…って。