氷姫に騎士を
力の利用
俺がリリア姫に敬語を使わない、と誓ったあの夜から、二日経つ。
刀傷を負った利き腕は、まだ普段のようにうまく使えず、重たい物を持った日には傷口が開いてしまう。
自分の腕じゃないようで、なんとももどかしい。
だからこそ、リリア姫がこの二日ずっと部屋にこもり続けていることは俺にとって救いだった。
「なぁー、腹減ったんだけど」
俺よりも遥かに重症そうな男が、俺の部屋のベッドを占領しつつ、そう呟いた。
光がちょうど男の顔に差していないせいか、表情がよく見えないがこの二日一緒に居て、ようやくわかった。
何か持って来い。と少し脅しをかけているのだ。
「……ったく、燃費の悪い体だな」
俺は男の為に立ち上がった。
男の傷の治りが人並み以上の回復を見せているのは、馬鹿にならないほどの食欲のおかげだ。
そうでなければ、主でもない男に。
ましてや、主を襲った男に世話をかけてやる必要もない。
「あんたって変わりもんだよな」
男はトーンを下げ、低い声でそう呟いた。
「一応、あんたの命。貰おうとしたんだけど?」