氷姫に騎士を
コン、コン
「誰か来たぞー?」
木を叩く音が聞こえ、男はやる気のなさそうにそういった。
「レグザ。リリア姫が呼んでるよ」
扉を開ける前に用件を告げられ、俺の右手は止まったままになっている。
姿が見えなくとも声の主はメルスに違いない。
ここ二日、俺へ何か伝言を伝える役はメルスだからだ。
「ひゅーひゅー、夕暮れ時とはロマンチックだなぁ」
この男……人事だからと次から次まで言いたい放題言ってくれる。
そろそろ、何か策を打たなければ…。
これ以上悪化してもらっては、苛立ちが増えるばかりだ。
「なぁー?レグザー、怒んなよー」
俺の心境が読めるなら、その口調をどうにかしてほしいものだ、と心から願う。
「お前に怒るのは、時間の無駄にしかならない」
「ちょ、俺邪魔者みたいっ!!」
「…その通りだろ?」
「…………べちゃくちゃ喋る暇があるなら、早くリリア姫のところに行けば?」
深いため息とともにドアの向こうから、メルスの声がする。
男は、これ幸いと目を輝かせ、
「メルちゃん聞いてよーっ、レグザが俺のこといじめt「私に話し掛けないで、馬鹿が移る」
容赦ない言葉をたたき付けられていた。