氷姫に騎士を
俺が、おもしろい?
そんなのは初めて言われた。
「俺の名前はユラ。ユラ・イグナディト」
真剣な眼差しで俺を見ている。
ユラ。
男の名前はそうらしい。
それが嘘であれ、真実であれ、俺はきっとこいつに背中を預ける。
そう思った。
とりあえず、そう思った俺の考えは間違えじゃない。
近い未来、リリア姫を俺とこいつ…ユラで護り抜くだろう。
「ユラ…、よろしくな」
誰かを頼りにする『よろしく』の言葉は、今まで一度も言ったことはない。
いつも、一人で片付けるから。
「あと、レグザ」
「…なんだ?」
「腹減った!!帰ってきたら、晩飯よろしく!!」
ため息しかでない。
けど、これがユラらしいってことか。
と納得して、ほっとする自分がいることに気付いた。
なにはともあれ、
「燃費悪いやつ」
そう吐き捨てて、俺はリリア姫に会いに行くと、ユラに告げた。
「おー、イチャコラしてこーい」
そして、メシ。と最後にユラは言った。
うるさいやつ…そう思いながらも、口角が緩む。
俺にはない能天気さが、新鮮で。
うらやましいからなんだろう。
自分にないものを持ってる人間がいると、なんだか落ち着く。
そう思いながら、あのばかデカイ白い扉へ俺は足を進める。