氷姫に騎士を


「本日付けでリリア嬢の直属騎士に任命されたレグザ・フェン・イクサエルです」

王妃と王の前で膝を立て、俺は自分の剣を床に置いた。

王と王妃を見てはいけない規則だったが、少し見ただけで、なんとなく雰囲気だけは掴んだ。
王は、厳しく。王妃は、しなやか。
良く見かける組み合わせだった。

「挨拶などいらぬ。お主がどれ程騎士でいられるか、それを余に見せてくれ」

騎士でいられるか…?

つまり、リリア嬢を護る期間が長いのか、長くないかってことか。

「なるべくなら、死なずしてリリアを護ってください。レグザ」


『死』。
氷姫を護るのは至難の技、っていうことか。

それにしても、王妃の言った『死なずして』というのは騎士に言う言葉じゃない。

騎士なら、主を護る為なら命の一つや二つくらい落として当たり前じゃないのか?




「承知致しました」


騎士に迷いはいらない。
迷いは弱さとなって、主の命も失う。

護ればその内わかるだろう、と深く考えないようにした。

それが、師の教え。騎士の規則。




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