氷姫に騎士を

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俺が、リリア姫の部屋の前に着くと勝手に扉が開く。

扉が勝手に開くことに驚いたのは、湖から帰ってきた朝の一回だけ。

驚く俺の心境を読み取ってか、リリア姫は「扉は人を選ぶ」と答えてくれた。


世の中には不思議な扉もあるもんだ、と納得してからは、別に気にならない。

むしろ、変に気遣ったりしなくていい分楽である。


「…………レグザ…?」


部屋に入るなり、いつものようにカナリアのような声が俺の耳に聞こえる。


リリア姫は、ベッドに入っているよたで、影がゆっくりと起き上がる。


「…何か嬉しいことでもあったのね」


「まぁな」


約束の『二人のときは素の俺でいる』ことにもう戸惑いはない。

そりゃ確かに最初は、しどろもどろな言葉でしか受け答えは出来なかったけど…


「私にも聴かせて、その話」


人間みを帯びたリリア姫と居るのが楽しくなったのが一番きている。


多分、リリア姫はこの部屋に居ることで周りの人間とのコミュニケーションや、常識などを上手く学べないでいたのだろう。


だから、俺が何かを言う度、淡々とした声の裏に『もっと聴きたい、知りたい』という欲望があった。


教えることに終わりはなく、毎回訪れては話をし、話題が尽きることはない。





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