氷姫に騎士を


「…そう。彼はユラと言うの」


一連の流れを聞いたリリア姫は、その言葉を残した。


「今度また会いたいわ」


淡々とした、メリハリもない声。

でも、ホントに会いたいのだろう。


「じゃあ、今度来るときは連れてくるからな」


自然と俺の声は柔らかいものになった。


リリア姫と話しているときは、主と話しているというよりは、気軽に話せる“友人”のような気がする。


「それからレグザ。また行くわ」


「行くって、湖にか?」


コクンと、影はゆっくり首を縦にふる。


「祈りを捧げに行くの」


「…祈り?」


初めて湖に行く理由を聞いた。


何と言うか、東洋的な思想でいう“巫女”のようだと思う。


何のために、何に対して祈りを捧げるのか。


聞いたら、リリア姫は答えてくれるだろうか?


「今度もあなたは死なない」


まるで預言者だ。


正確さを示す鋭い口調が聴こえる。


どうして、俺の死にこだわる。


俺には、何がある?


話せば何かがわかるような気がしていた、この二日間。


けど、知りたいことは知れずにここまでいる。


無理に聞く必要性を感じないからだ。


とりあえず“リリア姫を護る”。


護れればそれでいい。


敬語じゃなくとも変わらない。


護れればそれでいいんだ。



< 21 / 23 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop