氷姫に騎士を
「…そう。彼はユラと言うの」
一連の流れを聞いたリリア姫は、その言葉を残した。
「今度また会いたいわ」
淡々とした、メリハリもない声。
でも、ホントに会いたいのだろう。
「じゃあ、今度来るときは連れてくるからな」
自然と俺の声は柔らかいものになった。
リリア姫と話しているときは、主と話しているというよりは、気軽に話せる“友人”のような気がする。
「それからレグザ。また行くわ」
「行くって、湖にか?」
コクンと、影はゆっくり首を縦にふる。
「祈りを捧げに行くの」
「…祈り?」
初めて湖に行く理由を聞いた。
何と言うか、東洋的な思想でいう“巫女”のようだと思う。
何のために、何に対して祈りを捧げるのか。
聞いたら、リリア姫は答えてくれるだろうか?
「今度もあなたは死なない」
まるで預言者だ。
正確さを示す鋭い口調が聴こえる。
どうして、俺の死にこだわる。
俺には、何がある?
話せば何かがわかるような気がしていた、この二日間。
けど、知りたいことは知れずにここまでいる。
無理に聞く必要性を感じないからだ。
とりあえず“リリア姫を護る”。
護れればそれでいい。
敬語じゃなくとも変わらない。
護れればそれでいいんだ。