氷姫に騎士を
「リリア姫は、この城の最上階にいるの」
玉座の間から出た俺を案内したのは、使用人のメルスという、さほど歳が変わらない侍女。
それでも、使用人になってからは、かなりの年月が経っているベテランようだった。
「それにしても、貴方のような若くて、美形な人がリリア姫の騎士なんだね」
メルスは口角を上げ微笑む。
その微笑みはどこか不気味に見え、王と王妃が言っていた言葉を思い出した。
「着いたよ」
「…?!」
目の前にある巨大な白い扉が思考を奪った。
まるで、その扉は神話に出て来るような天界と地上を結ぶ扉のような…。
この先に護るべき相手がいるというのか。
「ノックはいらないよ。
その扉は、人を選ぶ」
メルスは、慣れた口調でそう言った。
俺の前にも、かなりの数の人間がそうしようとしていた、と言うことが伺える。
俺は、扉に手をかけた。
ギィィイィ…
普通に開いた扉。
見かけには驚いたが、何処も変わりはない普通の扉だ。