氷姫に騎士を
「わ、たしは仕事に戻る」
その声の主、メルスを見れば、顔は真っ青に、声には覇気がなく何処か怯えているように見えた。
扉が開いたことに関係しているのかは分からないが、初めてのことだったんだろうと思う。
部屋に入る前、玉座の間でしたように俺は頭を下げる。
「レグザ・フェン・イクサエルです」
扉が巨大だったように部屋も広く、俺の声が届いているかはわからない。
部屋には日の光が入っていなく、扉が開いた途端に冷たい空気が流れてきている。
「……入って」
刹那、小さな声が俺を呼ぶ。
カナリアのように儚く、今にも消えてしまいそうな声が。
「…は」
その声に答えようと、俺は部屋の真ん中に向かった。
ギィィイィ…
後ろで、独りでに閉まる扉の音を感じながら。
扉が閉まると、周りの電気がつき、明るい雰囲気になった。
とはいえ、やはりこの部屋の空気は冷たい。
ベッドの上に、人が見える。
リリア姫だ。
噂は、本当だった。
彼女は、腰まである銀髪に透き通る青い瞳をしていた。
そして、美しいほどに整えられた顔が、人形じゃないのか?という疑問を問い掛けてくる。
無表情であるが故に彼女は余計、人形のように見えた。
「…貴方がレグザ…」
俺を見下しもせず、期待もせず、ただ彼女は俺を見ていた。
「はい。リリア姫」