氷姫に騎士を
「…黒い髪ね…」
俺に触れようとも、近付くこうともせずに彼女はそう言った。
俺の嫌いなこの髪の色の事を。
でも、この色が珍しいのだから仕方ない。
いつものことだ。
「…レグザ…」
「はッ」
「…貴方は死なない…」
預言者のように言葉を紡いでいるようだったが、最後の方は聴こえなかった。
わずかに聞き取れたのは、夜までなにもないということだけ。
夜に城でも抜け出すつもりなのだろうか、それとも奇襲をかけられるか。
二択にしろ、護ることに変わりはない。
「…それまで、この部屋にいて…」
「承知致しました」
無表情なリリア姫の顔をふと見たとき、その澄んだ青い瞳の向こうに、寂しいさの色が見えた気がする。
氷姫と呼ばれる彼女を寂しそうだと思ったのは偶然じゃない。
青い瞳が、俺に確信させている。