氷姫に騎士を
湖の幻影
月の光だけで明るくなった地上で俺は馬を走らせている。
後ろには、氷姫を乗せて。
監禁説は、間違いだった。
ただ、リリア姫が外に出るのが夜だから気付かなかっただけ。
「…そこを右」
リリア姫の誘導に従いながら、通ったことのない道を行く。
だから、これから、どこに行くのかなんて、わからない。
リリア姫が我が儘で動いているのかさえ、俺にはわからない。
とにかく、何かあれば彼女を護ればいいだけの話。
それだけだ。
「…着いたわ」
馬を止まらせると目の前には、湖が広がっていた。
月光が水面に反射して、幻想的な雰囲気だった。
呆気に取られてる場合じゃない。
俺は、馬から降り、リリア姫を馬から降ろす手伝いをした。
「あの湖の中に連れてって…」
「は。失礼致します」
俺は、リリア姫を両手で抱え、いわゆるお姫様抱っこをした。
……軽っ…。
本当にリリア姫は軽く、小さい。
誰かが護らなければ、いけないほどに弱い。
こんな姫が湖で何をするつもりなんだろうか。