氷姫に騎士を
冷たい水にどんどん体が浸る。
それでも、リリア姫が濡れないように気を使う。
「もう少し行くと濡れてしまうのですが、よろしいですか?」
「…いいわ」
濡れるのが嫌じゃないのか…。
貴族とは思えない行動だな。
湖の真ん中に立ったとき、リリア姫の手が伸びた。
「この湖から出たら、剣を構えて…来るから」
「来る?」
「大丈夫…貴方は黒い髪を持っているから」
「リリア姫?」
「死んだりしないわ」
この黒い髪がなんだと言うんだ。
“悪魔の印”だと言いたいのか?
ただ、リリア姫の言っている言葉の通り、湖から出たら戦闘になるのは、周りの空気でわかった。
複数の殺気を感じる。
それも、かなり強い殺気だ。
誰かを護りながら戦闘することは師から、大体は学んでいるから、何とかはなるだろう。
ただ…
「不躾ながら一つ。お聞きしてもよろしいでしょうか?」
聞いてみたくなった。
「…?」
「何故、危険だと承知でこのような所に出たのですか?」
「…貴方の為よ。」
「は?」
俺の為…。
「騎士を辞めるなら、先に知っておいたほうがいいと思ったの」
俺は、辞める前提だったのか。