氷姫に騎士を



湖から出た途端、4ヶ所から男達が現れた。


素早く、剣を構えた俺は、リリアを地面に座らせる。

勿論、下には俺が羽織っていたマントを敷いて。


キィィイィィィイン


金属のぶつかる音は、水面が揺れるほどの衝撃。

少し、手にその痺れがきた。


相手は相当な強さで俺に刃を向け、それは一瞬でも気を抜けば、即死を免れない程だ。


「……」


複数の殺気の中から、違う視線を感じた。

それは、いつものような冷たいものではなく、少し怯えている視線。

もしかして、―……


「どりゃぁぁあぁぁ!!!!!!」


右から月の光に反射して、また刃が降り注ぐ。


隙を与えず、俺を弱らせてからリリア姫を奪うつもりなんだろう。

そんなことはさせない。

「…必ず俺が護る」


一気に2つの剣を、まとめて薙ぎ払うと俺は少しの迷いもなく、正確に相手の懐へ刃を向ける。

刃向かうなら、殺すまで。


「…っち…」


自然と舌打ちが出る。

相手は、かすり傷程度の怪我で終わり、仕留めそこなっている。

もう少し、長引きそうだというところに腹がたつ。

そして、騎士らしからぬ言語に驚いたのか、リリア姫から少し声が漏れた。



< 9 / 23 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop