悪魔のKissを冥土の土産に

「…持ってない。」

「は？」

「一円も持ってない。」

正直に言うしか方法はない。

しかしだからといってすぐにこの状況から抜けられるわけがない。

「お前、どうやらこれをばらまいてほしいんだねー。」

軽くハハハッと笑うと長い髪をヒラヒラとなびかせてパッと背を向けた。

美しい彼女の心さえきれいであれば…と思う。

「ちょ、ちょっと待ってよ…。」

手を差し伸ばした先にふと違う人影に触れてすぐに僕の元へ戻ってきた。

それは黄色い派手な服を着てピンク色のひらひらした短いスカート、青く短い髪をして、眼帯をつけた女子だった。

「写真、返してくれる？」

その一言で彼女とすれ違った瞬間、目の前の人物が何をしたかがわかった。

「I'm sorry.I can not speak Japanese. Can you speak Engrish?」

僕は口を開けたままその姿を見ていた。

英語をしゃべる女子は僕から目を離して彼女に目を向けて聞いた。

彼女はどうやら英語は達者でないらしい。

イライラした様子でその場を去っていった。