お兄ちゃんです。


はぁ・・・
また疲れた。


ベッドにばたんっと倒れこんだ。

家でくつろげないなんて最悪。
あさひさんを見てるとなんだかイライラする。
気を使っているのがバレバレで、なんだか居心地が悪く感じる。

気を使わせているのは、
あたしのせいなのに。


わかってるけど、まだ認めたくない。

まだ何も認めたくないんだ。


家の空気があたしのせいで澱んでること。
あさひさんがあたしのお兄ちゃんと言うこと。


まだいやなんだ。



「ゆ〜ちゃ〜ん」

この声、お母さんだ。
そっか。そろそろ起きる時間だもんね。

「入ってい〜い??」


「いいよ」


ゆっくりとドアが開く。
寝起きのお母さんのっそり入ってきた。
体を起こしてベッドに腰かける。
「どしたの??」

「ゆうちゃん・・あのね、」

「あさひさんのこと??」


お母さんがふんわり笑った。

やめてよ、その笑い方あさひさんみたい。


「嫌い??あさちゃんのこと」

あさちゃんって・・・。

「わかんない。」

「言わなくてごめんね。びっくりさせようと思ってて、言わなかったんだぁ」


「びっくり・・って」

「覚えてる??ゆうちゃんが小学校の頃ね」

「え??」

「ゆうちゃん、お兄ちゃんが欲しいってお母さんに頼んでたんだよ〜」

「あ・・・」

そういえば、小学校の頃
友達のお兄ちゃんを羨ましくって、お母さんにねだったんだっけ。
あの頃は優しくて強くてかっこいいお兄ちゃんがいたらいいな、
ってずっと思ってた。


でもだからって・・・・

「だからって今更一緒に暮らすとかしたくないし、お兄ちゃんなんて思えないよ」


もう、遅いよ。

「ごめんね。なかなか機会がなくって今になっちゃったの」


目を細める。
ドアの前に立っているお母さんがゆらゆらして見える。

ベッドの布団をぎゅっと握った。


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