お兄ちゃんです。
「あ、あのさ・・・ゆうちゃん??」
なんかしどろもどろしてる。
急にどうしちゃったんだろう。
目もうろうろ泳ぎまくってる。
運転中だってのに。
ちゃんと前を向いてほしい。
「なに??」
「お、お守りって・・だ、だだだ誰にわたつ・・・渡すの??」
かみかみ・・・。
心なしか顔が真っ赤だ。
なにを考えているんだろうこのひと。
ちらちらとこちらの様子を伺っている。
ちゃんと前向いてくれ。
「それ言わなきゃだめ??」
ぷいっと前を向いた。
怒ってますよ感をたっぷり醸し出しながら。
「俺に言えないような人なの??」
あさひくんは開き直った。
なんだかこっちが恥ずかしくなってくる。
「野球部の人!!もうすぐ大きな大会があるから」
「野球部かぁ。いいね。」
「うん」
「・・ゆうちゃんはその人のこと、好きなの??」
「ひ、え!?」
覚悟はしていたものの、変な声が出てしまった。
どうやらあたしの声帯は反射神経が悪いらしい。
いつも変な声がでる。
吸い込めるだけ空気を吸い込んだ。
なんだか緊張する。
「・・うん///」
「ぅえ!?」
今度はあさひくんが変な声を出した。
ますます恥ずかしくなる。
「あ、ごめん。なんかやけに素直だったから・・」
「た、たまにはこんな話もいいかなって///」
「うん、いいね」
ぽん、と大きな掌が頭に置かれた。
とてもあったかい。
あの保健室みたいだ。
掌から伝わる温もりが身体中に流れてくる。ほかほかする。
わしゃわしゃと髪を撫でてすぐに離れた。
ちょっと離れ惜しくて、あさひくんを見上げてみる。
あさひくんはいつもみたいにふわふわ笑っていた。