お兄ちゃんです。

「2年になるちょっと前に、家にお兄ちゃんだって名乗る人が来たの」

「お兄ちゃん・・・??」

「うん。まだあたしも信じらんないけどね。お母さんもそう言うから、多分そうなんだと思う。」

「そっかぁ。お兄ちゃんか。なんかいいじゃんっ」

「いいかなぁ??あ、でねその人あさひくんって言うの」

「あさひくん、かぁ。あ、もしかして今日ゆうひのこと向かえに来てた人??」

「え!?見たの??」

「学校中大騒ぎだったよ〜??イケメンが来たーって」

けらけらと高笑いが聞こえた。
あたしも笑った。
まぁ確かにイケメンだしな。(笑)
「瀬田くんも心配してたよ」

声がつまる。息もつまった。
瀬田くんが??あたしを??

高鳴る鼓動が聞こえてくる。
びりびりと心地よい緊張が走った。

「あと葉月も」

「あっははは!!葉月くんも??」

「そ、葉月も。ゆうひ、あれ進んでんの??」

「進んでるよ。聖子ちゃんにも教えてもらってる。それにあさひくんもいるし」

「お兄ちゃんか」

自分の中でなにかがひっかかる。
やっぱりお兄ちゃんって言葉に少し抵抗があるみたい。

「・・・ちがうよ」

突然みちが黙った。
きっとあたしがなにか言い出すのを待ってくれてるんだ。
みちはいつもこうして、あたしを待ってくれる。
そうしてあたしの本音を引き出してくれるのだ。


「・・なんかちがうんだ」

そう、お兄ちゃんじゃないんだ。
またぎゅっとする。
今度は苦しくなってきて涙が出そうになる。

「あさひくんのこと考えると・・胸がぎゅってなる」

「うん」

「なんでかわからないんだ」

「うん」

「あたし・・・お兄ちゃんって思いたくない。それは・・・もしかしたら、」


────────もしかしたら・・・
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