お兄ちゃんです。

夏が始まります。


───────

ミーンミンミンミーー―ーン…


「あっつ〜い」

「もうセミが泣いてるよ」

「もう7月だもんね」


幸子がだるそうに机に突っ伏した。
みちもぼんやり外を見ている。

あたしはワイシャツをぱたぱたさせていた。

やっとじめじめから解放されつつあると言うのに、今度は蒸し暑さがやってきた。
7月に入って日も浅い今日の日。
あたしたちは放課後に教室で、ぐだぐだしている途中。
特にやることはないけど時々こうして集まっている。


グランドから野球部の声が聞こえる。
今までよりぐっと気合いが入っているように聞こえる。

もうすぐ大会だもんね。


「ゆうひちゃんは・・・お守り、渡すのですか??」

聖子ちゃんの声で我に返った。

「・・どうしようかな」

「せっかく頑張って作ってらっしゃったのに。」

「そーだよ!!倒れちゃうくらい頑張ったんだから渡しなよ??」

幸子ががばっと起き上がり、真剣な眼差しを向けて言った。
ふと、みちと目があう。
あたしはすぐにそらしてしまった。

「もしかして、完成してないのですか??」

聖子ちゃんが心配そうにあたしを見つめる。
それを振り払うようにあたしはにっこり笑ってみせた。

「ううん。もう完成してるよ、大丈夫!!」

ただ、いろいろと気持ちがついていかないんだ。
瀬田くんに対する気持ちがわからなくなっちゃった。
だからどう渡したらいいか、わからない。
どんな気持ちで渡したらいいか、わからないんだ。



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