お兄ちゃんです。

「鮎川くんって・・・鮎川翔太くん??」

みちがなにかを思い出すかのように問うた。

「う、うん!そう!!」

「鮎川くんって、なんか不思議な人だよね」

「うんうん!!」

「えー!!誰だれー!?二人だけずるーい」

幸子が窓に乗り出した。
聖子ちゃんもゆっくりグランドを眺める。
あたしは幸子の隣に行って、鮎川くんを指さした。
鮎川くんはまだ瀬田くんと話している。


「ほら、瀬田くんと話してる人」
「え??・・・あ、あれか!!」

「あら??あの方、ゆうひちゃんをお姫様抱っこして保健室へ連れて行ってくださった方では・・・」

「ぅえ!?」

幸子とあたしの声がハモった。

おひ、お姫様抱っこって!?
そんなの聞いてない!?

「えー!?お姫様抱っことかうらやましー!!」

幸子が外に向かって叫んだ。
あたしは慌てて押さえこむ。

「ちょっと!!幸子!!」

「んでも、鮎川くんって涼宮さんと付き合ってるよね??」

「へ??涼宮、さん??」

涼宮さんって、確か野球部マネージャーの。

「もしかして・・・下の名前って・・・」

幸子が意味ありげにみちに詰め寄る。

「ハルヒじゃないから」

みちはさらっと答えた。
ですよね〜。と幸子が笑う。

「たしか、涼宮ちえこ、じゃなかったっけ??」

「あ!チェコちゃんさんですね!」
ぽん、と手のひらに拳を置いて、古典的ひらめいたポーズを聖子ちゃんが決めた。

「そうそう!!チェコちゃんって呼ばれてる」

「チェコちゃんさんってややこしいな」

「この間、知り合ったばかりですので」

聖子ちゃんが照れ笑いをした。

へぇ〜。鮎川くんって彼女とかいたんだ。意外だな。

またグランドに目を向ける。
すらっとした黒髪の女の子がボール拾いをしている。

あれが涼宮ちえこちゃんかな??

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