お兄ちゃんです。

「俺には忘れられない人がいるんだ。」

忘れられない人・・・。

「今はその人以上に誰かを想う事が、できない。」


すごくつらそう。
目の前にたしかにあたしがいるのに、
どこか違う遠くを見つめているみたい。
あさひさんが近いようで遠い。
どこかに消えてしまいそう。

また心の奥がぎゅうっとした。
今度はちくちく痛みまでする。


「ごめん、ゆうちゃん・・・」


ごめん、ゆうちゃん・・・。

あさひさんの声が頭の中で反響してる。
悲しいはずなのに涙が出てこない。
つらいはずなのにつらいと思えない。

ただ、目の前のあさひくんを想う心がちくちく痛むだけだった。

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