スノー*フェイク 【番外編】
「ま、マジかよ…っ!!」
それ以前に、この家はなんだ!?
ちょ、築何年だよこれやべぇだろ今にも崩れそうだぞ!!
俺の住んでいるアパートもそれなりに酷いが、ここほどではなかった。
唖然としながら、着替えて部屋から出てきた赤城の後ろをまた歩いた。
バレないために一応、俺もいつも着ているジャージに着替えておいた。
これで見つかる心配はない。
「(…しっかし、赤城があんな家に住んでるなんてな…)」
言われてみれば、他の生徒とは少し立ち振舞いが違う。
勉強も、周りの子に着いていけない節がある。
だからって誰も、本当はお嬢様じゃない……なんて思わねぇよな…。
1人で頭を抱えているうちに、赤城は迷うことなくあのコンビニに入って行った。
店員の男と少し言葉を交わした後、店の奥に姿を消した。
数分して、店の制服に着替えた赤城が出てきた。
…紛れもなく、あいつだった。
髪はかなり伸びていたが、遠目に見ても絶対の確信が持てた。
「(……そんなことってあるんだな)」
感心してしまった。
まさか俺と同じように、自分を偽って学園で過ごしているやつがいるなんて。
赤城の家を見て、経済的に余裕がないことはわかった。
…それなのに皇鈴学園に通っている理由は、なんなのか。
中学生の頃から働いていたという大変な事実も、この際どうでも良かった。
得られたものは大きかったと1人で納得し、俺はさっさと踵を返した。
それからの俺は、今までのように肩肘を張ることなく日々を送れていた気がする。
赤城の存在が、あいつが頑張り続けていることが、俺の励みにもなっていた。
―――しかし半年以上経ったある夜、俺はまた懲りずに失態を犯すことになる。