スノー*フェイク 【番外編】
灰皿でタバコの火を消し、空いた左手も同様に春姫の頬に添えた。
いつでもキスできる姿勢を自ら作っているようで、少し恥ずかしくなった。
「……なァ、」
返事はない。
わかってる。
でも、言いたいんだ。
お前がそれで、少しでも安心できるなら。
「……好きだ」
今日だけで何度言ったかわからない愛の言葉を囁き、そっと口付けた。
一瞬で離したのは、自分の理性が負けそうだったから。
「…あーくそ、大人の余裕なんかありゃしねぇ…」
それでも春姫は、彼女は、なにも知らないまま眠り続けている。
きっと目が醒めたら、
また、
“あたしのどこが好きなんですか!?ちょっと、聞いてます!?”
……なんて言って、怒るんだろうな。
それさえ愛おしく感じる俺は、相当イカレちまってるらしい。