君を想うとⅢ~True love~
「しゅー…ちゃん…。」
目の前にあるのは、しゅーちゃんの厚い胸板。
そして回された筋肉質な腕。
お日さまの匂い。
突然、突きつけられた懐かしい感覚に心臓がドクンと高鳴る。
「伊織…、伊織…。」
しゅーちゃんは震える声で私の名前を何度も呼ぶ。
しゅーちゃん…。
いつも元気で明るいしゅーちゃんが見せた、その声が痛々しくて。
“大丈夫だよ”って気持ちを込めて…
彼の背中に手を回してポンポンと軽く叩くと、しゅーちゃんは抱きしめていた力を更に強くしてこう言った。
「伊織。」
「…ん?」
「お前は“俺が幸せにならなきゃ誰も幸せにできない”
そう…言ったよな…?」
「うん。そう…言ったよ??」
幸せは他人に貰うものじゃなくて、自分で作り上げるもの。
そう…
田中さんに教わったから。
しゅーちゃんの問いかけにコクンと頷くと
「じゃあ…、俺を選んでよ。部長じゃなく、この俺を選んでよ……。」
しゅーちゃんは静かな声で、私にそう訴えかけた。