君を想うとⅢ~True love~




「しゅー…ちゃん…。」





目の前にあるのは、しゅーちゃんの厚い胸板。
そして回された筋肉質な腕。
お日さまの匂い。







突然、突きつけられた懐かしい感覚に心臓がドクンと高鳴る。







「伊織…、伊織…。」







しゅーちゃんは震える声で私の名前を何度も呼ぶ。







しゅーちゃん…。








いつも元気で明るいしゅーちゃんが見せた、その声が痛々しくて。


“大丈夫だよ”って気持ちを込めて…
彼の背中に手を回してポンポンと軽く叩くと、しゅーちゃんは抱きしめていた力を更に強くしてこう言った。








「伊織。」


「…ん?」


「お前は“俺が幸せにならなきゃ誰も幸せにできない”
そう…言ったよな…?」



「うん。そう…言ったよ??」








幸せは他人に貰うものじゃなくて、自分で作り上げるもの。



そう…
田中さんに教わったから。









しゅーちゃんの問いかけにコクンと頷くと







「じゃあ…、俺を選んでよ。部長じゃなく、この俺を選んでよ……。」






しゅーちゃんは静かな声で、私にそう訴えかけた。



< 102 / 569 >

この作品をシェア

pagetop