君を想うとⅢ~True love~
とかアホなコトを考えつつ、半分上の空で引き継ぎをしてるとアッという間に定時になって。
「ごめんね、藤堂くん。
昨日の今日なのに引き継ぎで手間取らせちゃって…。」
目の前にいる大親友、田中さんが申し訳なさそうに俺を見つめる。
「あ~!!やめてやめて!!
俺がやりたくてやってるんスから。田中さんが謝るようなコトじゃないですよ。」
昨日の停電騒ぎで上の人からは今日は休んでいいって言われてたんだけど…。
俺に残された時間はあと4日。
引き継ぎに、デスクの片付けに、今やってる仕事の案件だってまとめなきゃいけないワケで。
あのまま帰るコトなんて出来なくて、ずーっと定時まで居残ってたんだけど…、どうも田中さんはそれが気にかかっているらしい。
「気にしないで下さい、田中さん!!
俺がやりたくてやってるコトなんスから!!」
そう言ってニッと笑うと田中さんは安心したような顔をして
「…そう言ってくれると気持ちが楽になれたよ。ありがとう、藤堂くん。」
ふんわりと柔らかく笑ってくれた。
俺に残された時間はあと4日。
…いや…正確にはあと3日か。
あと3日しかないんだと思うと気が焦る。
伊織とずっと一緒にいたいと思うし、もっとアイツの側でアイツを感じていたいと心底思う。
アイツは知らないんだろうな。
俺がアイツのコトをどんなに好きかなんて。
“しゅーちゃん”ってアイツが俺を呼ぶ度に胸がギュッて苦しくなって…
堪らない気持ちになるだなんて、鈍感なアイツは何一つ知ることはないんだろう。