君を想うとⅢ~True love~


あたしも伊織も。
今まで彼を美化して見てた部分がどこかにある。





藤堂センパイは

優しくて

頼りがいがあって

みんなの太陽みたいな明るさを持った人だ







そう…どこかで決めつけてた。






付き合いが長い分、楽しい過去を知っている分、どうしても人は今の記憶じゃなく過去の楽しい記憶を大切に掘り返す。







自分の中で凝り固まったイメージと虚像。



過去の記憶から成長した、大切な人の姿。




センパイが好きなのは今の伊織?それとも過去の伊織?

伊織は今のセンパイをちゃんと見て、今の藤堂秀人と向かい合えてる?







それに気づいた時。


あたしは…センパイのプロポーズがとても寒々しいものに感じてしまった。








センパイはきっと…
伊織の全てに向き合えていない。



そして彼が愛しく思っている伊織は…
今の伊織じゃなく、過去の記憶の中に生きてる彼女だ。







なんだか不自然。
どこかイビツな形に見える二人の愛。







センパイは…きっと部長さんには敵わない。
“今を生きてる”と言い切って、今の伊織を心の底から愛してくれる、あの彼にはきっと逆立ちしても敵わない。







< 244 / 569 >

この作品をシェア

pagetop