君を想うとⅢ~True love~
「あ…、ゴメン……。」
その声でハッと正気に戻り、俺は掴んでいた手をパッと放す。
――危ねぇ。
あのまま田中さんが声をかけてくれなかったらヤバかった。
酷い言葉をアイツに投げつけて
心も身体もギタギタに傷つけてしまいそうだった。
愛しいから傷つけたい。
伊織に俺の消えない爪痕を残してやりたい。
俺はあの一瞬
そんな酷いコトを考えていた。
はぁ~……。
こうなってくると病気だな。
俺は病的なレベルで伊織にホレているらしい。
ハァ……。
俺は小さくため息をつくと
「田中さーん、ちょっと待ってー!!今俺、トイレー!!!!」
壁の際から田中さんに向かって大きく叫ぶ。
そして一呼吸置いて
「伊織はちょっと時間置いて出てこいよ?俺、先に出てるからさ。」
そう言って。
心配そうに俺を見つめる伊織の頭をポンポンと叩いた。