君を想うとⅢ~True love~
しゅーちゃんと歩いた、どこまでも続く田んぼ道と、どこまでも広がる青空。
頬を撫でる、さわやかな風と虫達の声。
しゅーちゃんから香る、ほのかな塩素の香り。
あの時の私は…
全力でカレが好きだった。
カレの全てがいとしくて
カレの全てになりたいと願っていたのに……
皮肉にも10年後の私はカレの手を離そうとしている――……。
あの頃とは違う
東京の少し狭い青空を見上げていた、カレの視線がフッと前を向いたとき。
私は最後の時が来たのだと直感した。
「……。」
「……。」
正面からまっすぐに。
でも一言も交わすことなく、向かい合う私達。
それだけで…
しゅーちゃんも、私も、わかってしまった。
ついにきた。
この長い想いにサヨナラを告げるときがやってきたんだ―……。
フゥと軽く息を吐くと。
しゅーちゃんは怒りも、悲しみも、全てを洗い流したような涼しい目をして、こう言った。
「ありがとう、伊織。
少しでも迷ってくれたのなら。
少しでも俺の存在がお前の心に爪あとをたてることができたなら……。
俺はそれで十分だ、ありがとう。」