君を想うとⅢ~True love~



――しゅーちゃん……!!!



カレのその悲痛な言葉が私の胸をグリンとえぐる。
あの頃の私が疼きだして“どうして!?”と私を責める。




でも…
負けちゃいけない。



私は選択したんだから。
しゅーちゃんを選ばないと決めたのは私なんだから。





私は弱い自分に負けないように。
あの頃の自分に負けないように、きつく手のひらを握り締める。





視線を決してカレからそらさずに。
まっすぐ前を向きながらコクンとうなづくと、彼は帽子を目深(まぶか)にかぶりなおして、スーツケースに手をかけた。
そして…、キッパリとした声でこう言ったんだ。






「サヨナラ、伊織――……。」








しゅーちゃんはそのまま一度も私を振り返ることはなく、まっすぐ改札に向かって歩いていった。




そして……私も。
一度もカレを振り返ることはなく、まっすぐに前を見据えながらカレにサヨナラを告げた。





カレに見せてはいけないとこらえていた涙の糸をフッと緩めると、瞳からは滝のような涙があふれて止まらなかった。




傷つけずには終われなかった、幼かったあの日の精一杯の恋。
サヨナラでしか紡(つむ)げなかった、彼との恋。




人生思うようにいかないなんて、よく知ってる。
傷つけずに、傷つかずに、終わる恋愛なんてありえない。




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