君を想うとⅢ~True love~
「ある日を境にな?
不思議なコトに俺はお前と話すのが楽しみになっちまったんだよ。
伊織や仁よりも、誰よりも…な?」
そう言った後。
先輩は真面目な顔をして、こう切り出した。
「一ノ瀬理央さん、キミの返事を聞かせてクダサイ。」
センパイはあたしの涙を人差し指でスゥっとぬぐう。
高校の時。
同じ部活のセンパイとして目の前に現れた、藤堂センパイ。
快活で、優しくて、少しバカな彼に淡い恋心を抱いた時。
彼は伊織に恋をした。
いつも脇役の私。
彼と伊織の恋の傍観者にしか過ぎなくて、主人公にはなりきれない、あたし。
いつも…いつも、夢見てた。
こんな風にあたしだけを見つめてくれること。
あたしだけを柔らかな笑顔で包んでくれること。
彼の柔らかな瞳に見つめられながら、
思い返すのは、報われない恋に悩んだ、あの切ない日々だった。