君を想うとⅢ~True love~

頬をなでる潮風。


地中海性季候に位置するサンフランシスコは、ヨーロッパと同じで風が少しだけ肌寒い。


一枚カーディガンを羽織っていないと夏とはいえ、クシュンと軽くクシャミをしてしまいそうになる。







「おっ!!出来たぞ!!仁!!」


「わぁ~♪お山にトンネル~!!」








つかの間の夏の日差しを浴びて、海岸で遊ぶ仁としゅーちゃん。

いつも子どもみたいで、明るくて、優しい、しゅーちゃんが明日には理央のお婿さんになるんだなぁと思うと、ちょっぴり不思議な気分。





彼を見つめるだけでドキドキして、
見つめられたらもっとドキドキして。

触れられたら死にそうに恥ずかしくて
でも嬉しくて……。




そんな青春の甘酸っぱい時間を過ごしたしゅーちゃんが、明日結婚する。





人生って本当に不思議だ、と思う。




その都度その都度の選択によって、どんどん柱が変わっていく。




だってそうでしょ?



あの時、4年前の代官山駅でしゅーちゃんを選んでいたら……
きっと私たち3人の人生はまるっきり違うものになっていただろうから。






つらいコトだってある。
逃げ出したくなるくらいの困難も
ありえないほどの失望感も。





でも……。




「見て!!かあさん!!
パパがトンネル作ってくれたよ~!!」




私はきっと、何度だって立ち上がれるタイプのオンナなんだと思う。




目の前で笑ってくれる仁と
いつも私を見守ってくれる、大切な理央としゅーちゃん。



そして…
桐谷慎からの最初で最後のラブレター。




単純で、考えナシかも知れないけれど、私はソレさえあればどんな困難にも立ち向かえる自信があるよ。




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