ワイルドハート「短編」
煙の臭いがしていた。





火事?




ニーナは縛りを解かれてもまだとどまっていた。





獣も鳥もいなくなった。
樹の下に降りようとした。





ガチャガチャ…。あの音!





急いで登るも足が滑り身を潜める。






「ここも焼き払え!!あぶり出せ!」






アズライト兵!






火を放とうとする。






ダメ…。ジェードが帰ってくるのに…。






この樹は特別…。主だけの場所…。






そう思った時には飛び出していた。






「いたぞ!!」






ニーナは走った。出来るだけ遠くに…。





光の指す森の中を…。






兵が待ち伏せしていた。





「やはりここか…。いくらあぶり出しても見つからないわけだ…。」






「あなた…。」






お母様を切った男…。






「あなたのお陰で随分恥をかいた。また逃げられては困りますな。」






ニヤリと笑うたび悪寒が走る…。






手足を縛り、身を露にされる。袋に詰められ…。何も見えなくなった。






「あなたがこんなところに逃げるから火を放つなんて面倒なこと…。兵がどれだけ減ったか…。損ばかりだ!アンバーの財宝が無ければ今頃…。」




光は闇の中…。何もない。私には何もない。
苦しい…。
意識は途絶えた。
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