ワイルドハート「短編」
ニーナは一人になり泣いていた。




何を考えているの?どうして何も言ってくれないの?
私は…。





自ら死ぬことは怖くてできなかった。



恐い?私は…。生きたいの?





また夕暮れが戻ってくる。





カサ!ジェードがそこにいた。





いつもと様子が違った。
明らかに怪我をしていた。





虚ろな目を私に…。いつものように血液を奪って行く。





このまま魂まで吸い込んで…。





腕を引っ張る。






綺麗な瞳は…。一瞬揺らいだ。





「ニーナ…。」






「はい…。」
驚いていたが返事を返す。話しかけてきたのははじめて。






「私が怖いか?」






「怖い?」
今さら…。食べてと願う私に…。





「怖いとも恐くないとも…。」





ジェードは怪訝な顔をする。





「答えはどちらもです。」
そして自分の気持ちにきづく。




この瞳は魅力的に私を引きずる。死にたい気持ちを隠してしまう。






「時は恐ろしい程に通り過ぎる。」
ジェードは遠くを見つめる。




暗闇が近づく。
「人は変わる…。」






血を吸い込んで…。



激しい口づけを落とす。




「禁忌を犯すものは人…。闇は闇の中に生きる。光は光の中に戻る。」




主は森に…。孤独な番人は闇に溶ける。



禁忌を犯すものは…。
決して戻れない。






闇夜に兵士の悲鳴。
今日もまた一人と数が減る。
< 8 / 19 >

この作品をシェア

pagetop