闇のプリンス ~オオカミと死の女神~《休載中》
「記憶……? 」
そしたら、こんなに苦しい思いもしなくて済んだのに。
こらえていた涙が溢れ出した。
「なんで泣いて…… 」
ぎゅっ
私は涙を拭いながら、ルキアに抱き着いた。
「ありがとう。さよなら…… 」
そう呟くと、思い出を手放すように彼から離れた。
「えっ…… 」
ルキアの目が一瞬赤く光った。
「私も、忘れるから…… 」
涙を拭うと、レイとケイトの間を駆け抜けドアに手を伸ばした。
「待って 」
私は彼の言葉に振り向かず、ただ夢中に屋敷を飛び出していた。
さよなら、レイ。
さよなら、ケイト。
さよなら、私の大好きなひと。