闇のプリンス ~オオカミと死の女神~《休載中》

静かな部屋に、カチャカチャとティーカップやスプーンの音が響く。


「確かお茶ダメだったよね。紅茶なら飲める? 」


「そんな事覚えてたんだ。うん、飲めるよ 」


一瞬驚いた表情を見せながらも、ふっと唇が緩んだ。


「よかった」と、紅茶とママレードケーキを机へ運ぶ。


「……最近、あいつとどう? 」


ダークの言葉に、ピクッと手の動きが止まる。


「わかってるくせに…… 」


そう俯き加減に答えながら、お皿を置いた。


「忘れようと思ってるの? 」


「思ってるよ。もう、前みたいには戻れないってわかってる。でも…… 」


「忘れようとしなくていいよ 」


「え? 」


予想外の展開に、ポカンとダークを見る。


「忘れようとすればまた考えてしまう。考えなければいいんだ 」


そういう事か。


でも、確かにその通りかもしれない。


少し黙り込んでいると、ダークが神妙な面持ちでこっちを見た。


「俺が忘れさせてやるよ 」


< 29 / 133 >

この作品をシェア

pagetop