闇のプリンス ~オオカミと死の女神~《休載中》
静かな部屋に、カチャカチャとティーカップやスプーンの音が響く。
「確かお茶ダメだったよね。紅茶なら飲める? 」
「そんな事覚えてたんだ。うん、飲めるよ 」
一瞬驚いた表情を見せながらも、ふっと唇が緩んだ。
「よかった」と、紅茶とママレードケーキを机へ運ぶ。
「……最近、あいつとどう? 」
ダークの言葉に、ピクッと手の動きが止まる。
「わかってるくせに…… 」
そう俯き加減に答えながら、お皿を置いた。
「忘れようと思ってるの? 」
「思ってるよ。もう、前みたいには戻れないってわかってる。でも…… 」
「忘れようとしなくていいよ 」
「え? 」
予想外の展開に、ポカンとダークを見る。
「忘れようとすればまた考えてしまう。考えなければいいんだ 」
そういう事か。
でも、確かにその通りかもしれない。
少し黙り込んでいると、ダークが神妙な面持ちでこっちを見た。
「俺が忘れさせてやるよ 」