闇のプリンス ~オオカミと死の女神~《休載中》
紅茶にミルクを入れながら、彼の顔を思い浮かべる。
つらい……。
「楽しいよ 」
スプーンでミルクを混ぜると、皿の隅に静かに置いた。
楽しいのは、嘘じゃない。
でもそれ以上に、苦しい。
せっかく戻ってきたのに、素っ気ない態度なのはどうして?
私の事、忘れちゃったの?
「樹里、どうしたの? 」
ポンッと肩を叩かれ、瞬時に我に返る。
お母さんが心配そうに私を覗き込んで、みんなも動きを止めた。
「溜め込むとお肌にも良くないよ。つらかったら、何でも言いなさい 」
温かい手が、私の頭をポンポンと包み込んだ。
目頭が熱くなって、瞳からポロポロと涙が零れてきた。
「お母さん…… 」
ギュッと胸に抱きつくと、懐かしい心地よさが蘇った。