ホワイトライト、サマーズエンド
胸の中で、リオが小さく息を吐いて、頷いた。
髪から甘い香りがした。
俺が強く抱きしめると、リオの手が俺のジャケットを強く引っ張った。
まるでそれが何かの合図のように、そのままお互いの炎が猛るように、俺たちは口唇を重ねた。

繁華街のホテルで朝を迎え、眠りから醒めたリオはもう昨夜のような様相ではなかった。
腰のくびれを指でなでると、リオは振り向いて言った。

「くすぐったいよ」

リオの目から炎は消え、穏やかな瞳と、いつもの口元の涼しい笑みが浮かぶ。
昨夜の渇望はまるでどこかに溶けてなくなったように、俺たちは裸のまま、子どものようにじゃれあった。

それが付き合い始めた日ということになるのだろうか。
ただ俺たちは境遇が境遇だけに、普通の恋人らしいことはあまりしていない。
昔から、2週に1度会えればいい方だ。
大体会うのは俺のマンションで、リオは終電に乗り24時間営業しているスーパーの袋を下げてやってくる。
リオの作るトマトソースのパスタを2人で食べ、深夜のサッカーを観ながら抱き合って眠る。
朝は早く、俺が目を醒ますとリオはもういない。
テーブルの上にはしゃれたサラダとパンとかが用意されていて、
それと一緒にイラストの描かれたメモ書きが置いてある。
俺はそれを眺めながら1人で朝食を食べ、仕事に出かける。
それが俺たちの普通だった。
2人で出かけた記憶があるとしたら、仕事の合間に強行して行った2泊の沖縄旅行しか覚えていない。

そしてそのはじまりの日から、もう5年の月日が経つ。
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