ホワイトライト、サマーズエンド
ビルに囲まれた首都高。街道沿いの街路樹。せわしない光に溢れた街。
交差点で混ざり合う人の波。
5年ぶりのその光景を目の前にして、わたしの中で何かがプチンと音を立てて切れた。
フィルムの早回しのように、脳内で記憶が巡る。
鮮やかにまるでそこにあるように、目の前にあのときの自分がいるように。
わたしはその様子に思わずわ、と声をあげた。

ナギを見送ってから車を降りて深く息を吸った。
悲しくはない、辛くもない、そう思っていたし何も感じないのに、しとしとと雨が降るように涙が落ちた。
小さな酒屋で赤ワインを3本買った。
2本はオープナーがいるタイプのもので、仕方なく繁華街への入り口にある大きな量販店に入る。
髪を金に染めグルグルに巻いたギャルたちが、店の奥へ繋がる道を塞いでいる。
爪に塗ったマニキュアの色が同じで、わたしは反吐が出そうになった。

結局ナギとの待ち合わせ場所がわからず路地に迷い込んだわたしは、
耐えきれなくなって赤ワインをひとりで開けた。
3本とも重いボディで、でもどれも味気なくて、それでも赤い液体を喉に流し込みながら笑った。
ナギが車に置いていったMDを順番に流しながら、それに合わせて大声で歌いながら。

「ここ、邪魔なんだよ。」と運転席のガラスにノックしてきた中年の男は、
笑いながら泣いているわたしを見て不気味がってすぐに行ってしまった。
赤ワインは得意だけれど、流石に3本ともなると目の前がぐるぐる回った。
朦朧とした頭で車を駐車し直した、そこから記憶がない。
< 18 / 23 >

この作品をシェア

pagetop