ホワイトライト、サマーズエンド

2.Rockn'Roll in the Car

曲が終わり、ネイティヴ発音のVJが彼女の当時の様子を語り始める。
わたしはまだ生まれてさえいなかった頃のこと。
ただわかるのは、この曲は2002年にようやく20歳になったわたしにもきちんと、
そのときの彼女の思いや空気を伝えてくれる。

そしてこの曲が喚起させる思い出も、一緒に。

「もう少し寝たら」

運転席からナギが呟いた。

「うん」

ナギはラジオを止め、後部座席に丸まっていたブランケットをわたしの頭から無造作にかぶせた。
煙草の匂いとお香の匂いが染み付いていて、
綺麗とは言えないけどなんだか甘く纏わりつくような、落ち着く香りだった。

「やけに匂いよるな」

前を向いたままナギは眉をしかめる。
わたしはそれを覗き見てから、ブランケットを深くかぶり目を閉じた。
カーステレオにMDを入れる音と同時に、錆びたナイフみたいなギターのカッティングと
英国訛りの歌がわたしの鼓膜をつんざく。
潔いフレーズのリフレインに、わたしは心地よくなってすぐ眠りについた。

わたしがあいつと出会ったのは、それから2日あとのこと。
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