ホワイトライト、サマーズエンド

2.18歳の自分

向かいの廊下の奥、ポスターの中の自分と目が合う。

社長室の手前の廊下の壁には、俺が18のとき撮った腕時計の広告ポスターが貼ってある。
今より若干髪が長い。
そしてまだ少年の風情を残した表情の中で目には妙に力が入っていて、自分の写真ながら笑ってしまう。
何かに常にイライラしていた。18歳なんて、大体皆そうだろうけど。

「俺、まだまだいけると思うんすよ」

ポスターに目をやっていた俺に気付き、後ろで原がそう言った。
目が少し、赤かった。俺は思わず目を逸らした。

「御崎さんじゃないと出来ない仕事なんすよ、これなんて本当に」

声が震えていて、俺が視線を戻すと原の目から一粒涙が落ちた。
まず本人を差し置いといて、よく涙なんか流せるもんだ。
言いようのない怒りがどこかからこみあげてくる。
兎にも角にも一番泣きたいのは誰だ、ふざけんな。

「すいません・・・」

気付いたら原のシャツの襟元を掴んでいた。
原は殴られることを想定したのか、ぎゅっと目を瞑るとまたボロボロと涙を流した。

「俺が悪いんす、頭下げてお願いしたんすけど・・・」

頭の中で、いつもの原のおきあがりこぼしみたいなお辞儀の様子がよぎる。
俺は原を突き離した。なんだか余計に惨めだ。
騒ぎに気付いて、受付から先月入ったばかりの契約社員の女が駆け寄ってきた。

「リュウさん・・・」

受付嬢は原に目配せをして上手に卒なく、残念そうな顔を作る。それが余計に俺の神経を逆撫でする。
会議室にいたスタッフたちも見て見ない振りをする。
話を知らなかったのは俺だけってわけだ。
戸惑ったように見せる受付嬢と、涙を流すマネージャー。
俺はなんだか可笑しくなって、清く正しく悪者になってやろうと思った。

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