ホワイトライト、サマーズエンド

3.About a girl

カラフルな動物だか妖精だかの着ぐるみと、メルヘンな城。
現実離れした空間に中学生だった俺らはそれなりにはしゃいでいたが、
それ以上に入れ込む女子たちの気持ちがよく解らなかった。

何かの耳なんかをつけてきゃあきゃあ騒いでいる集団の中に、リオはいた。
微笑んでいたけれど、数歩後ろをとろとろと歩きながら腕組みをして、ずっと遠くを眺めていた。

帰り際土産屋で物色する集団から離れて、
リオは店の入り口で座り込み、使い捨てのカメラを空に向けていた。

「何撮んの?」

買ったばかりのチョコレートを食べながら話しかけると、
リオはんー?と抑揚のない声を出して、ファインダーを覗きながら呟いた。

「退屈なわたしを見てる、空」

シャキ、と安っぽいシャッターの音。
リオは振り返って俺を見て、ちょっと驚いた顔をした。
ミサキ君だぁ、と笑う。俺は少しむっとする。

「ミサキだけど、何か?」

「いや、みんなのアイドルの御崎君がわたしなんかに話かけるんだぁ、って思って」

耳の下で切りそろえられた潔いショートヘア。
強く主張しすぎない顔のパーツの中で印象的なくるりと丸い目と、どこか冷たい口元の笑み。
こいつ、バカにしてんのか?
俺が口を開く前にリオは腕を伸ばして、カメラだけ俺に近づけた。

「背、高いねぇ」

シャッター音とほぼ同時に、リオはぱっと立ち上がった。
思ったより背丈があり、すらっと伸びた白い腕が制服のシャツからのぞいている。
授業が1、2個かぶっていたくらいで、話したのは確かに初めてだった。
俺はリオの鞄についているネームプレートを見て思い出した。

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